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海をわたる機関車

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この本は趣味書というより学術書です。機関車の形態や技術の話はほとんどなく、日本に輸入された機関車を産業史として解説した本です。

私が面白かったのは、機関車メーカーと代理店の関係が詳述されているところです。臼井さんや金田さんの本でも、機関車の輸入代理店についてはあまり書かれていないので、本書を読んでよくわかりました。

また1900年頃には既にイギリスの蒸気機関車メーカーは衰退期にはいっており、ドイツが機械化と標準化で低廉で性能のよい機関車を輸出できるようになっていたというのを読んで、大正の機関車国産化にあたって鉄道省の朝倉希一や島秀雄がドイツ流に傾倒したのもなるほどと思いました。機関車の国産化がもう10年遅れていたら、日本にもドイツ製蒸機がもっと輸入されていたかもしれません。

また日露戦争の兵站輸送用に9200などのボールドウィンの蒸機を輸入して使用したが、中国東北部では耐寒仕様が十分ではなくて不評で、満鉄の蒸機はALCO が多数受注することになったというのも初耳でした。

明治・大正期の輸入蒸機や国産初期の歴史的背景の教養をつけるにはよい書物だと思います。

もう一冊 中公新書の「鉄道のドイツ史」というのも読みましたが、これはドイツ史の中での鉄道について書かれた本で、鉄道趣味的にはあまり参考にはならなかったです。ただプロイセンの鉄道は、軍の退役者を中心に採用したので、軍隊式の規律の強い運営がおこなわれたという話は興味深かったです。あと第二次世界大戦の時英米はライン河の橋梁と操車場を空爆して、ルール地方の炭鉱からドイツの工場への石炭輸送ルートを潰してドイツの生産力低下を図ったというのもなるほどと思いました。もちろんドイツの歴史書として読むならおもしろいですよ。

 

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Comments

ボールドウィンの輸入代理店だったフレイザー商会についてもいろいろと書かれているのでしょうか? そうであれば興味があるのですが。

Posted by: Tad | May 18, 2020 01:00 AM

同書には6ページほどフレイザー商会とボールドウィン社のマーケッティングについて記述がありました。ヴォークレイン複式機関車の設計者でありボールドウィン社の社長も務めたS.M.ヴォークレインの息子S.ヴォークレイン・ジュニアもW.H.クロフォードの後任としてフレイザー商会のセールスエンジニアとして1904-1905年滞日していたようです。

Posted by: ゆうえん・こうじ | May 18, 2020 08:52 PM

「久しぶりに開店した書店」に出向き、目に付いた「鉄道のドイツ史」を購入しました。
 これから、読みます。

Posted by: 備南鉄道 | May 18, 2020 09:56 PM

ご指摘の本は、パラパラめくった程度だけですけど、 私の脳内としては、 ドイツの武器は人件費の安さ。米国の武器は大量生産による価格引き下げ。個別注文もトッピング変えれば簡単と思います。 英国には注文しても「納品は2年後」とか言われると、発注者側の鉄道も受け取った頃には状況も変わってしまう。

Posted by: 鈴木光太郎 | May 22, 2020 11:19 PM

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