高効率ギアボックス(7) 犬に馬車を牽かせる
dda40x さんが開発された高効率ギアシステムですが、今回の私の6200への搭載例=HO/16番の小型車両への小型モーターを使った搭載は、開発者が意図された使用法では全くの適応外「犬に馬車を牽かせるようなもの」で全くモーターの特性(無負荷回転数が高く最大トルクが弱い)がこのシステムには不適応であるという結論になります。
開発者が「こういう使い方は、そろそろ止めていただきたい」といわれるのももっともなことだと思います。最低でもSH15ぐらいのモーターが搭載できる蒸機でないとあの高効率ギアシステムの真価は発揮できないと思います。この高効率ギアシステムを小型モーターを使って、小型機関車に搭載しようと計画しておられる方がおられるなら、考え直された方がよいと私も思います。
とはいっても最近ブログに発表されたKM氏の同じトビーの6200形改造作例では、IMONミニモーターを使って、ペーパー客車を4,5両牽いて快走するという成果が得られており、このギアシステムの伝動効率が高効率であるなら、同じように小型モーターを使っても「走行抵抗の変化に対する速度応答」を改善すれば、同等の走行性が得られるのではないかと考えました。
モーターの特性についてもう少し考えてみたいと思います。
モーターにかかる電圧が一定であれば、その特性はその電圧での無負荷最大回転数と停止するときの最大トルクを結ぶ直線であらわせる。車両が曲線や勾配に入って走行抵抗が大きくなったときは、その回転数は低下する。上の模式図で、赤い矢印の分だけ負荷が増加すると、最大回転数が高く、最大トルクの小さいモーター(緑色の特性曲線)は大きく(緑色の両矢印)回転数が低下するが、最大回転数が低く、最大トルクの大きいモーター(青色の特性曲線)では(青色の両矢印)あまり回転数は低下しません。
これがまさに、小型モーターを搭載した私の作例と米国型などの大型機に適性のあった大きなコアレスモーターを搭載した場合との違いになります。後者は走行抵抗が変化しても速度はあまり変化しないが、前者は大きく変化することになります。
走行抵抗が増加しても、速度をそのままに保つためには電圧をあげれば、最大回転数と最大トルクを結んだ直線(黒点線)は、最大定格電圧の最大回転数と最大トルクを結んだ直線(オレンジ実線)までは平行に移動増加していくので対応できます。
回転数-トルク直線の電圧による変化についてはI田氏のブログのグラフがわかりやすいので参照してください。
それを手動で操作しようとすると、「スロットルを握ったまま列車から目を離せない」状態となってしまいます。
その電圧調整操作が自動でできないかというと、モーター回転数を検知して、自動的に電圧を変化させて速度制御するようにすれば可能です。そういう仕組みで一番導入が簡単なのは、DCCデコーダーに搭載されているBEMF(モーター逆起電圧)を使ってモーター回転数を検知して回転数を制御するシステムです。
本来の物理現象を電子的に補償して動作特性を変化させるのは、この高効率ギアシステムの開発者の意図とは異なっているようです。しかし前述のように同等のモーターで従来のギアシステムを使って走らすことのできる列車なら、「走行抵抗の変化への速度応答」の問題を解決すれば、むしろ良好な走行性が得られるのではないかと考えて、回転数制御機能のついたDCCデコーダーを使って、もう少し実験してみようと思います。
手綱さばきが巧妙で一任できる「回転数制御機能のついたDCCデコーダー」という御者を馬車に乗せて、小馬でもそれなりの馬車が牽けるかどうか試してみたいと思います。
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