模型化するということ(続)
KM氏のツイート
<分かってて省略するのと、知らずに見落とすのは、同じ結果に見えて全然違うのよな……。知らない人は騙され、知ってる人は失望する。>
これは模型化するときの至言だと思います。
鉄道模型に限らず、実物プロトタイプを模型にするとき、実物のすべてを縮小して盛り込むわけにはいかないので、とくにディティールは取捨選択せざるを得ないわけです。
ただ「パンタグラフなどの集電装置がない電車」は考えられないように、実物の要素でこれがないと実物では成り立たないものはあるわけで、模型にそれがついてないと???となるわけです。とくにそのディテールがプロトタイプの特徴となっている場合は他の部分がいくらよくできていてもぶち壊しになってしまいます。
パンタグラフのない電車でも第三軌条の地下鉄は存在しますが、台車に集電装置がついているのを知って省略するのと 知らずにつけないのでは「この電車の実物 どこから集電してるねん?」となったときに差が出ると思います。
実物の米国型のキャブは、側面からの見かけ上のキャブの床板部分には椅子がのっていて、中央部分は低くなってテンダー床板と同じ高さであり、この部分に機関助手 Firemanが乗って石炭を焼べるようになっています。ところが模型では左右の床板が一体になっていた方が、強度的にも工作上も都合がよいので、キャブの床板は中央でつないで左右一体に作ることはよくあります。今回の8450形もそのように作っていますが、実物では中央の部分はありません。またこの本来のキャブ中央床板部分には機炭間ドローバーの止めねじなどがあることが多いので、むしろダミーの
床板を見かけ上のキャブ床板部分につくって、キャブ後面の開口部だけ切り欠いておいた方が模型としては都合がよいと思います。
また実物ではブレーキロッドが中央1本の機関車も多いです。今回の8450形は実物の構造はよくわからないですが、8000番台のボールドウィン製のテンダー機関車では、かつて鉄道史料40号に掲載された臼井さんのブレーキ装置の解説記事によると中央1本のものが多いので、この機関車もおそらく中央1本だと思います。ただ実物どおりに作ると ギアボックスや動輪押さえ板の止めねじに支障するので 左右2本として作っています。
走り装置を実物どおり作ったのでは、よく走る模型はできないといわますが、材料の板厚や線径だけでなく形態もそのままの構造で縮小して作ればよいというわけではないと思います。走る鉄道模型はソリッドモデルと違って、模型としての強度や工作やメンテナンスのしやすさを考えた構造がよいと私は思います。とはいっても実物の構造を調べないで、適当に作ったのでは、手抜き工事としてしか評価はされないと思います。
模型だと日本ではサンドドームだが、英語ではSand Box というのが正しいが、前者の方が日本では模型用語として通用しているので、サンドドームと呼んでよいのではないか ということをコンさんがブログに書かれていました。
確かに米国のPrecision Scaleのパーツカタログみると、Sand Boxと書かれています。ただ目次にはDomes(sand)という項目あるので、Sand Domeといういい方もあるのかもしれません。またSand Boxという言葉には、サンドドームだけではなく、動輪のスプラッシャーカバーと一体化した砂箱や 電関などの台車についた砂箱も含まれるようです。
ところで模型でいうロッドピンも 実物ではクランクピンというようですが、イモンの商品検索でみるとKATOとアダチがクランクピンという商品名で、金岡工房がロッドピンという商品名ですね そういえばサンゴもロッドピンという商品名でした。
別に元の英語に忠実である必要もないと思いますが、メーカーによって混用されるのは、わかりにくいですね。
KNさんが面白いことをブログに書かれていました。
https://karatcreek.blog.ss-blog.jp/2020-04-12
確かに和室で、畳を水田に見立て、折り曲げた座布団を山にみたてて、組立線路で模型を走らせていたのは、究極のディスプレーレイアウトだったかもしれないです。
テレビドラマや映画のようにリアルで精密なシナリーの中で模型を走らせるだけでなく、舞台のような簡素な小道具の中で模型を走らせるのもありだと思うようになりました。
先日還暦を迎えましたが、還暦までにはレイアウト!と思っていましたが、絵に描いた餅に終わってしまいました。トホホです。
東京北の丸にある国立近代美術館工芸館が、金沢に移転するそうで、3/8までパッション20という展覧会をやっています。先月末上京したときに見に行ってきました。建物自体も煉瓦造りで、旧近衛師団の司令部だそうで一見の価値はあります。
その展示のなかで、銅工芸製品の展示で気になる解説がありました。
バリ在住の著名な美術商・林忠正に「高岡銅工ニ答フル書」と題する手紙がある。1886(明治19) 年3月9日 郷里高岡銅器の名エ・白崎善平に輸出不況の打開策を請われて、高岡のみならず全国の工芸家の幸福を願い、夜を徹してしたためたものだ。当時の日本の工芸界に向けて苦言しながら、図案改良すなわち制作全体を貫くヴィジョンの重要性に触れた林の先見の明を以下に抜粋・要約する。
・精巧かつ手間をかけたものだけがよいと思うのは誤り。装飾過剰は美術からかけ離れる。
・技術は立派でも肝心の構図が的を外している。図案を軽んじて近視眼的に作ろうとするから。部分的に技術の粋を尽くしても それで美しさが増したとは思えない。
・図面を送れというが、作者自身の発想でなければ意味がなく、そこから考えを改めたい。
・こうして述ぺていることが百枚の図に勝ると信じる。
これは昨夏のJAMの河田耕一さんの「中尾豊とその時代」のクリニックの中で示された「鉄道模型における造形的考察の一断面」に通じるものがあると思います。
中尾豊さんは、東京美術学校(現在の東京芸大)で学ばれているので、おそらく教育のなかでこれに通じること聞かれたのではないかと想像しています。
皆さんは模型を作るときに図面をどこまで描かれますか?
ディティールまで詳細に図面に描きこむという方もおられますし、形式図程度の図面しか描かないという方もおられるようです。
工学系で職業訓練として製図などの基礎教育を受けている人は、図面をみれば完成したときの状態が頭に浮かぶらしいので、「図面の通り作ればできる」ということになるようです。私はそういう教育・訓練を受けていないので、図面を見ても完成した状態が頭に浮かんできません。実際に作ってみなければわからないので、図面をいくらきっちり描いても、模型製作が目的なら時間の浪費のような気がしています。学生のときスケッチの教育は受けたし、仕事上スケッチすることが少なくはないので、備忘録として絵やフリーハンドの図を描くことはありますが、すべてを図面として描くことはありません。
機芸社の特集シリーズ「蒸機を作る」に平野和幸さんと久保田富弘さんの対談記事が載っています。久保田さんは「形式図程度の図面は描くが、ドームや煙突などは削りながら形をみていく」といわれているのに対し、平野さんは「ドームのRやパイピングの曲がりまで図面に描いてそのとおりに作る」といわれています。久保田さんはプロの写真家だったので、写真をみればそれが形として模型の三次元イメージにつながったのだと思います。やはり図面を描いてイメージをつくる機械屋の平野さんとは模型製作へのアプローチが違うのだと思いました。とはいっても久保田さんも走行性能のために精度が必要な下回りはきっちり図面を描くといわれています。
自分はどちらかというと久保田派で、最近は金田茂裕さんや近藤一郎さんの形式図と片野正巳さんのスケールイラストをパソコン上で切り貼りして形式図程度の図面を作って、それを印刷してメモを書き込みながら作っていくことが多いです。みなさんはいかがでしょうか?
先日の記事で、中尾豊さんがTMSに書かれた論文「鉄道模型における造形的考察の一断面」 の要旨を 河田さんがクリニックで解説されたも内容のうち一部を引用させていただきました。リクエストもありましたので、河田さんが中尾論文の要旨として提示された7項目すべてを下に引用します。(文はスライド原文のままです)
モデルは実物の鉄道の再現的なものだが、表現する美は実物から受ける感動そのものではない
感情と観察が創作の中心であり、鉄道がいかに影響を与えようとも造形表現の対象にすぎない
実感とは単に実物らしく見える、ということではない。 実物に対して抱いていく感動、記憶、連想の上に、モデルに接した際に起こる美的な感動である
縮尺は便利なものではあるが、立体表現の上で絶対出来なものではない
工作技術は必要だが過剰であってはならない。美的感受性とそれを実現する表現能力が重要である
実物に対する知識は絶対条件ではなく、造形表現にどう寄与するかを習得するためである
運転性は表現活動の一部であり、造形価値に等しい性能が求められる
2019/8/18 JAMクリニック 河田耕一「中尾豊とその時代」 の講演スライドより引用
先日のコメントでdda40xさんにご指摘いただいた、運転性についても中尾さんは言及しておられました。
☆8/26追記
この中尾豊さん論文の「鉄道模型における造形的考察の一断面」は、鉄道模型趣味昭和26年新年号No22に掲載されていますが、1971年(昭和46年)4月号No274 の291-293頁に再掲載されていることが判明しました。さすがに昭和26年新年号 は私も持っていませんが、274号は持っていましたので再読してみました。といってももう48年前に刊行された雑誌です。
またこの当時はページ数は各号単独ではなく、年間通し頁だったのですね。インデックスから記事探す場合は、この方が便利でした。
1/80がHOかどうか?という話がDさんのサイトを中心に囂しくなっているようです。
結局この話は、HOゲージが、OゲージやNゲージのように複数の縮尺を内包するマルチスケールなのか、HOが3.5mmスケール1/87という縮尺を意味しているユニスケールなのか という点に集約するのだと思います。
NMRAのスタンダードの熟読教義解釈したり、外国の書物に3.8mmスケールもHOと書いてある記述がみつかったとか、いろいろ皆さん出典探しされているようです。それも結構ですが、私が思うのは、HOがマルチスケールだと主張するなら英国のOOゲージ(4mmスケール)の存在をどうみるのかということになると思います。HOがマルチスケールだと主張している人達は、英国に乗り込んであなた方のモデルの呼称はおかしいのでHOに改名しろと叫ぶつもりなんでしょうか?
OOゲージという模型が成立した段階で、HOは3.5mmスケール1/87という縮尺を意味しているユニスケールになったのだと私は思っています。山崎喜陽氏の「16番の思想」を過去の遺物のようにいうかたもおられますが、おそらく彼は鉄道模型の世界では米国のHOと英国のOOが鼎立しているという認識で、日本型は1/80で16.5mmゲージの線路を走らせる16番という概念を案出したのだと思います。とはいっても山崎氏の世界観には米国と英国しかなく、欧州などは見えてなかったというのは事実だと思います。だから最初の16番では、満鉄型やロシア型含む欧州型は、1/87ではなく1/90とされていたようです。また16番という概念は、マルチスケールを内包するのではなく、基本は1/80で作る、ただし小型車両は少し大きめ、大きい車両は小さめにつくるというコンセプトだったはずです。HOやOOにはこういうプロトタイプの大きさで縮尺を変えるなんていう概念はなかったと思います。英国の009でも2フィーターの小型車両は縮尺は1/76のままガニ股で作っているようです。
日本型1/80モデルは、HOゲージという足回りインフラを利用しているのは事実ですが、それを理由に1/80はHOだというのは暴論だと思います。 On30やSn42とおなじような、16.5mmゲージ線路を利用した縮尺の違うモデルに過ぎないと私は思っています。
ところでそういう話の中では、線路と車輪の足回り規格も一緒クタ、ごっちゃに話されているようですが、1/80もHOゲージという足回りインフラを利用するのなら、その足回りはNMRAの規格に準拠するのが当然だと私は思います。見かけ本位のポイントもまともに通過できないような薄い車輪を製造しているメーカーがおかしいというのは私も同じ意見です。あるいは英国のOOを無視して話されている方は、あれはフランジやバックゲージなどの規格が違うので、米国のHOとは別物だから、英国のOOゲージは、1/80がHOかどうか?という話で気にする必要はないと考えているのでしょうか。
だから私は、1/80日本型を走らせる線路やポイントなどをHOゲージと称して売るのはまったく問題ないと考えています。ただその線路を走る1/80日本型はHOではなくて16番なのだと思います。
やはり「1/80はHOではありません」と私も思います。
社会人になってしばらくして模型中断後 再開して20年以上経ちますが、再開後はいわゆる「蒸機工作派」の人達をメインに付き合ってきましたが、いろいろあって数年前からは「電車屋」の方とのつきあいも増えてきました。
興味のある車種や工作法などはかなり違うのですが、それだからこそ、そういう人達と呑んでワイワイ話をするのは楽しいですね。自分の興味がある領域の身内?のみで話していたときにはないような、新鮮?な話がいろいろ聞けて楽しいです。
ただ中には一部に自分の価値観を人に押しつけてくる方もおられますが、そういう方は苦手です。まあそういう方はあまり集まりにはでてこられないか、ネットなどでの情報発信メインにしている方が多いようです。
ネットや海外模型誌などをみれば、世界中といってもいわゆる先進国中心でしょうが、には多様な鉄道模型の在り方や規格が存在しています。自分の模型とは、その在り方が違っているといって目を瞑らずに、自分のやり方や他人の模型のやり方を否定するようなことを声高に叫んだりせずに楽しんでいこうと思います。
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